イベントレポート 12/4 SPIRIT @渋谷RUBYROOM by中野皓作


 PSJ東京大会で初めて会って、喫煙所で喋りかけてくれた印象的な男の子がいた。
それが中野皓作で、普段演劇をやっている(だけじゃなくジャンベを叩いたり絵を描いたり、多才)彼はポエトリーリーディング界隈にも居つくことにしたのか、編集三木はそれからよく遭遇するようになった。
この間またオープンマイクで会ったので、レポート書いてみない?と酒をギャランティに誘ってみたら、想像通り彼らしい文章を書いてくれた。
彼もイベントも面白いから、くっつけ婆のようなこの役割が出来てなによりである。
以下、中野皓作によるオープンマイクイベント「SPIRIT」のレポート、そしてSPIRIT主宰のお二人から、ぜひイベントの概要など説明を載せたいとメッセージをご寄稿頂いたものも、併せて。



【2017/12/4 SPIRIT Report】

2017年12月4日、月曜日の夜。
年末ムード真っ盛りの渋谷ハチ公前から、109方面へ。
小雨が降る。毎月第一月曜日のこの時間の降水確率は高い気がする。
スクランブル交差点を渡ろうとすると、往来する人の群れにパトカーが滑り込み、先行車両を呼び止めた。停車したセダンの若者と連れ合いの女の子は笑っていた。
前日に刈り上げた頭が寒い。
 
今日の目的は【RUBY ROOM】で行われる、オープンマイクイベント『SPIRIT』へ参加するためだ。
主催されているのは、詩人・大島健夫さん URAOCBさんの両名。
大島さんにお会いしたのは今年の9月。PSJ秋 C大会のことだ。あの時の大島さんの姿は目に焼き付いている。演劇だの、ダンスだの、絵画だの、色んな方面に顔を出している私だが、大島さんのパフォーマンスを目にしたとき、「ラスボスだ」と、思った。
 
さて、【RUBY ROOM】へ向かう急な斜面を登り、これまた急な階段を上ると、私の前には2017PSJ秋大会チャンピオンの三木悠莉の姿。そして、詩人・藤原游さん。受付にはいつものように大島さんの力強い眼差しが迎えてくれた。
先に言っておくが、というか、察しは付くことだろうが、「私は大島さんが大好き」である。特別扱いになってしまうのは致し方ないと思って読み進めてもらいたい。
 
受付の際、入り口の脇にオレンジの目出し帽の方がいた。どうやらオープンマイクに参加するらしいのだが、受付の様子を見ると、どうやら言葉を発していない。どんなパフォーマンスをするのか。気になるのを通り越して「大丈夫か?」「何か事件になりやしないだろうか」という不安が浮かんだ。
 
【RUBY ROOM】には何人かの詩人が集まっている。私はイケメンのマスターにジャックダニエルのハイボールを頼んだ。マスターの声質が何気にお気に入りだ。
いつも思うのだけれど、2000円払って、ドリンクチケット二枚は嬉しい。モノによってはプラス料金だけど、それでも安いと思う。こういうものなんだろうか。私はオープンマイクイベントは『SPIRIT』しか知らないので相場がわからないが、演劇のイベントでは大抵ドリンクチケットは一枚の場合が多い。今度、方々訪ね歩いてみよう。
 
ハイボールで喉を潤す。三木悠莉を含め様々な詩人と話をする。
PSJ全国大会で知り合ったマリアがやってくる。マリアはロシアからの大学院留学生だ。彼女と何度かメッセージのやり取りをしたが、私より日本語が堪能である。
 
そろそろ開始の時間が近づいて、URAさんがステージに立つ。
この回は【SPIRIT】が開催されて3周年になるそうで。なるほど、参加者の数が多いのはそういうわけかと合点がいった。
 
私はバーカウンターにもたれて周りを見る。
色んな人がいるなと、いつも思う。元気そうな人、オタクっぽい人。イケメン。スーツ姿。ジャージ姿。毛玉のパーカー姿。静かな雰囲気の美人。ロックなおじ様。海外の方(前回はフランス代表の詩人・JYBや、Jordan Smithさんがいらっしゃったのでさらに多国籍感が強かった)
皆、[詩]の為にここに居るんだと思うと、感動する。[詩を読むため][詩を聞くため][詩を感じるため][詩を語るため]人柄や職業や、そういうものを全部越えて、一つの場所に集まって、[詩]を共有する。それだけの引力が[詩]にはあるんだと思うと、感動する。
 
そして、オープンマイクが始まる。
最初は大島健夫さんのパフォーマンスからだ。


淡々と力強く、[詩]の世界が構築されていく。不可思議であるが、しかし、奇妙な現実感を伴った風景が会場内に広がっていく。大島さんの世界観はシュールだ。だが、リアリティがある。私は[詩]の形式というものに関しては不勉強な部分があるので何とも言えない部分があるが、大島さんの[詩]は不条理演劇を見ているようだ。蟹やうなぎやうんち、YouTubeでもいくつかの朗読を見たが、どれもこれも、確実に大島さんの見ている風景を、紡がれる言葉を通してのぞかせてくれる。そういう、錯覚になる。その為には大島さん自身が確固たる意志を持って[詩]と向き合い、[詩]によってこの世界を表現しようという責任のようなモノを感じるのだ。その強い想いが、聞くもの、見るものに、確かな比喩世界の窓を開いてくれる。
少なくとも、私はそう感じる。
と、大島健夫論はこの辺りにしておこう。
語れるんです。
私の妄想だけで大島さんを語れてしまう自分がちょっと気持ち悪い。
 
ゲストパフォーマーが続く。
今回のゲストは「もがくひと


白いTシャツに痩せた顔、ちょっとした髭にニット帽。夏場の渋谷にいそうな格好の男性。しかし、目が印象的だ。
ぎょろぎょろしてる。
ご本人は釣りが趣味のようだが、なるほど。どこか魚っぽさを感じる。
「もがくひと」作曲のインスト曲が流れ、「もがくひと」は語り始めた。30分間、一度も途切れることなく、一度も休むことなく、連続するパフォーマンス。引いて、満ちてと、まるで海のような水の流れのような時間。激しくもあり、優しくもあり。ステージから降り、参加者と同じ目線に立ち、語り、語り、語る。言葉が波のように【RUBY ROOM】全体に満ちていく。
やや前傾姿勢のスタイルから繰り出される。いや、流れ湧き出てくるような言葉は音楽に混じる声音と相まって、何層にも重なって耳に届いていく。心地いい感触。
聞いているとき、目を閉じると自分が前後上下のわからない場所に浮かんでいるような感覚に襲われた。言葉の波。水。
パフォーマンスの終了は、波が引く、というよりも、広がった波を収めていったという形容が正しいのか。
「私は十分泳いだのでここいらで広げた水は閉まっておきます」
そんな印象だった。
 
「もがくひと」の次はいよいよオープンマイクが始まる。
URAOCBさんからの注意事項とルールが告げられ、早速開始である。

恐縮ながら私も読ませてもらった。


12/23に行われる演劇イベント出演作品の台本から抜粋して語らせてもらった。元々30分のモノを5分に抜粋するのはなかなか苦心したのだが、盛り上げることが出来たようで嬉しかった。
自分の順番の後、緊張がほぐれたのか周りの来場者が増えていることに気が付く。
必然、場の空気も盛り上がっている。
一人一人の詩人に関して語り始めると、えらい分量になるので詳しい出演者は割愛させていただくが、先述のPSJ2017日本代表三木悠莉をはじめホントいつも思うのだけれど、『いろんな人いすぎて、すげえ楽しい』
 
私は【SPIRIT】しかオープンマイクのイベントには参加したことがないのでわからないのだけれど、他のイベントもきっとこういう雰囲気なのだろう。だったらいいなと、思う。
人はみんな違う。とはよく言うけれど、それは真実だと思う。感じ方や考え方、生き方、呼吸の仕方、酒の飲み方、歩き方、同じモノなどあるはずがない。だからこそ、様々な表現方法が生み出されているのだし、その数の分だけ、表現者が存在している。
私が知り合い、愛する詩人たちは皆とても優しい。それは人の違いを理解しているからなのだろう。
『私とお前は違うだろうが、だからと言ってお前を受け入れない理由にはならない』
そういう無言のメッセージが聞こえるような気がするのだ。
 
オープンマイクも後半になり、途中で様相がおかしくなった(少なくとも私はそう感じたのだが、私だけではなかったはずだ)。前述したマリアが、素朴でとてもかわいらしい世界観の詩を読み上げた後、登壇したのは神主だった。
いや、視界には入っていたんだ。神主がいることは。しかし、何故神主がいるんだ。渋谷の、月曜の夜のライブバーに、神主がいる。


CCDさんの祝詞が上がる。なんだが異様。全員お頭を下げる。そしてお頭を上げる。一同思ったはずだ。
『なんだこの時間!?』
絶妙に不思議な空気になったところで、件の覆面の方が上がってくる。若干会場の雰囲気に緊張感が走る、が。ミスターFと名乗った彼は、非常に礼儀正しい態度で友人のイベントの宣伝を行った後、自身のパフォーマンスに入っていった。そして、熱い熱いエネルギーを会場中にぶちまける。強い圧力に会場中の熱量が一気に上がって、5分枠の16名が終了。
その後4分枠の方々のオープンマイクに移り、まだまだ熱気は収まらない。
 
ラストはURAOCBさん。


大島さんとは違った『バリッ』とした声の質感で何度も魂を殴打されるような感覚。大島さんが世界観=面で響くのに対し、URAさんの声はメッセージ=点で届く。しかし、荒々しいのだけれど、決して乱暴ではなく、鋭く、スマートで的確に正確に狙いすましたような強い言葉。URAOCBさんの目力に圧倒された。
 
イベント終了後、皆さんにご挨拶。
遅い時間ということもあって、人が少なくなっていたのが寂しい。私も、自分のお芝居の宣伝をしつつ退散。
雨は上がっていて、大きな月が出ていた。
 
9月から通っている【SPIRIT】。この場所に出会えたことは私の人生にとって大きな幸運だと思いつつ、副都心線に乗り込んだ。
 
大島さん、URAOCBさん、3周年おめでとうございます。これからも、あの場所があり続けること、そして、もっとたくさんの[詩人]達に愛される場所であることを願って。
 
中野皓作



主宰のお二人からのメッセージ

「SPIRITは、日本スポークンワーズ協会の大島健夫とURAOCBが毎月第一月曜日、渋谷RUBY ROOMにて開催する、ポエトリーリーディングのオープンマイクイベントです。
 
スタートは2014年12月でした。今回取り上げて頂いた2017年12月の回は、36回の開催となります。
 
『心を声に。声を言葉に。言葉を、明日に』というキャッチフレーズは、大島がかつて池袋3-tri-で2008年6月から2012年12月まで毎月第一水曜に主宰していたオープンマイクイベント『Poe-Tri』からそのまま引き継いたものです。SPIRITのPは、PoetryのPです。RはReadingのRであり、またRUBY ROOMのRでもあります。
 
主催2名の朗読、毎回異なるスペシャルゲストのパフォーマンス、そしてオープンマイクという構成は、当初から変わることがありません。ただ、オープンマイク参加希望者が回を追うごとに増えるのに伴って、もともとは【5分×12人】であった枠を次第に増設し、現在は【最初の16人まで5分、17人目以降は4分で22時40分まで】という構成となっております。
 
これまでゲストにお招きしたのは、初回から順に、
三角みづ紀/桑原滝弥/暁方ミセイ/田中光/文月悠光/前里慎太郎/橘上/MELODY KOGA/岡野康弘/片山さゆ里/カニエ・ナハ/飯田華子/川島むー/村田活彦/大崎清夏/吉田和史/Anti-Trench/レイト/野口あや子/ジョニー大蔵大臣/もり/音猿/山田亮太/青木研治/Dialogues/RIN a.k.a.貫井りらん/永方佑樹/Zohab Zee Khan(from Australia)/Jordan Smith/内藤重人/死紺亭柳竹/Emil Nygard(from Denmark)/馬野ミキ/GOKU/JYB(from France)/もがくひと
という皆様。様々なフィールドで活躍する詩人、ラッパー、ミュージシャンに加え、最近は海外のポエトリースラマーを招聘する機会も増えてまいりました。
 
声、言葉、人、場面、時間。それを伝達する際の色々なファクターと込められた思いによって多種多様・千変万化の表情を見せる『詩』というものの魅力を、ご来場くださる方には受け手としてあるいは読み手として、ポエトリーリーディングというフォーマットを通して楽しんで頂けるように。そして、何かしらの「ここに来る前の感覚」と異なるものを手にして日常の中に戻って頂けるように。それが主催の私どもの願いです。
 
ポエトリーリーディングは、この国に生きるほとんどの人がまだ足を踏み入れたことのない小さな世界です。SPIRITは、東京の片隅で行なわれている小さな小さなイベントです。しかしポエトリーリーディングは素晴らしいものです。そこでは、時として例えようもなく素晴らしい何かが生まれる瞬間があり、それに間近で触れることができます。
 
宜しければ是非、お出で下さい。月曜夜のひととき、ご一緒に詩の時空間を生きましょう。」

大島健夫、URAOCB



オープンマイクの愉しみ、結局のところ体感してしまうのが一番早いと思う。
新年一回目の開催は1/15(月)だそうだ。
多分編集三木も行くので、これを読んだあなたに会えることを今から楽しみにしている。


(イベントレポート:中野皓作、イベント概要寄稿:大島健夫、URAOCB  編集:UPJ5三木)